明確な制限の与え方

子どもは何をしていいのか、何をしてはいけないのかを知る必要があります。予測できる制限/枠組みは、子どもに安心感を与え、社会で受け入れられる行動規範を与えてくれます。

明確な制限のある環境を作りましょう

  • 子どもに制限を与えて、それをうまく機能させるのは非常に難しいことです。親である私たちは、自分の子ども時代、親から何を許され、何を制限されていたかに影響を受けています。また同時に、他の保護者は子どもに何を許可しているかにも影響を受けています。つまり私たちは常に丁度良いバランスを探しながら、過度に寛容でも厳格でもない、中庸を見極めることが重要です。
  • いつも「いいよ!」と言わないこと。 子どもの思い通りにさせた方が、泣き止んで笑顔に戻るので、つい楽な方を選んでいるかもしれません。でもいつも子どもに「いいよ」と言い続けることで、子どもは制限を受け入れられない人間になってしまいます。無制限の自由を与えられた子どもは、教師や他の大人、雇用主、更には法律の権威さえも受け入れられない大人になってしまうかもしれません。
  • いつも「ダメ、ダメ!」と言わないこと。 一方、常に「ダメ!」を繰り返すと、子どもが自分で考えたり、自分で決断することが難しくなってしまいます。

自由はここまでという枠組みを子どもに紹介しましょう

子どもが「自分は親からよく理解され、尊重されている」と感じた時に与える制限は、最も効果的です。多くの親は子どもを「躾ける」ために話し、指示、また教示など言葉で伝えようとします。しかし言葉よりも、行動がものを言うことがあります。ハグしたり、ウィンクしたり、微笑んだり、目的を持って行動している子どもを静かに見守ることで、自分は正しい道を歩んでいるというメッセージを子どもは受け取ります。時には、手を差し伸べたり、助けが必要か尋ねたりするだけで、子どもが必要とする十分なサポートになり得ます。同じように、注意する時の怒りの言葉や怒鳴り声よりも、眉をひそめたり、しかめっ面で不承認の意思を伝えることができます。ここで試してみてほしいやり方をいくつかご紹介します。

家庭用品や玩具は、本来の目的に合わせて使いましょう。

  • 玩具の使い方を見せましょう。 もし子どもが、「型落とし」のピースを投げてしまったら「玩具はやさしく使おうね」と言いながら、一つのピースを選んで、合う穴に出会うまで、一つ一つの穴に入れてみてください。幼い子ども達は気まぐれに玩具を投げることがありますが、それは子どもが破壊的だからではなく、通常、前向きで建設的な活動に子どもを再集中させるのは容易なことです。もしそれでも玩具を投げ続ける場合、子どもは何か投げるものが欲しいと伝えているのかもしれません。「外に行ってボール投げしよう!」と誘い、気分転換させてあげてください。
  • 目的に合わせて使いましょう。 椅子は座るもの、ベッドは寝るところ、テーブルは食べるところ、というように物は何のために使うのかという模範を紹介しましょう。もし子どもがベッドの上でジャンプをしたら「ベッドは寝るためのものよ。ジャンプなら外でできるよ。」と伝えます。これらのルールは、子どもだけでなく、大人にも同じように適用されます。大人も椅子の上に立ちません。

模範を見せる、設定する、そして秩序を保ちましょう

  • 玩具の片付け方を紹介しましょう。いくつかの玩具を棚に並べ、定期的にクローゼットなどに収納している玩具と入れ替え、玩具がいつでも新鮮で整頓された状態に保ちましょう。あなたが片付けのお手本を見せれば、子どもも同じように片付けるようになります。2歳の子どもは秩序が好きで、自分の生活も秩序立っていることを好みます。物がどこにあるかを吸収し、3歳になるとほとんどの場合、物を元の場所に戻すことができるようになるでしょう。遊びが終わったら「積み木はどこに行くのかな?」と明るく声をかけてください。秩序ある環境は、幼い子どもの心を整理づけするのを助けます。
  • 大人は、子どもにして欲しいことを、自身でもするように心掛けましょう。何を言うかよりも何をするかの方が肝心です。もし子どもに、食べる時はテーブルに座って欲しいなら、あなた自身もそうしましょう。歩きながら食べたり、電話中に食べたり、車の中で食べたりは、大人もしないように注意しましょう。子どもはあなたが異なることをしているのを、受け入れられないのです。もし子どもが食事中に立ち上がったり、食べ物で遊び始めたら「もう食べ終わったみたいだね」と言って食事を片付けましょう。子どもは「食事とは座ってすること」を学習しながら、徐々に衝動もコントロールできるようになっていきます。
  • 入ってはいけない場所の設定もしましょう。お家の中で入って欲しくない場所を分かりやすく設定することで、親子の争いごとが減ります。例えば、食器棚の扉にチャイルドロックをかけておけば、子どもが勝手に棚を開けてスパイスの瓶を開けてしまうことがなくなり、大人はイライラしなくてすみますね。

前向きな言葉を使って、子どもの気分転換しましょう。

  • 子どもにして欲しいことを否定的に伝えず、肯定的に伝えましょう。例えば、お料理をしている時「小麦粉を床に落としちゃダメ!」より、「小麦粉はボールに入れてね」と伝えましょう。
  • 2歳児にして欲しいことを伝えるときは、何をして欲しいか具体的に伝えましょう。テーブルに登っている子どもには、「テーブルから降りなさい!」と命令するより、テーブルから子どもを降ろしながら「足は床につけるよ」と伝えましょう。
  • 子どもが家の中で高いところに登ったり、室内を走ったりしたがる時は、外に出る機会をたくさん作ってあげましょう。家の中で走っている時は「家の中ではこうやって歩くよ」と楽しい声で言いながら、一緒に歩いてお手本を見せてあげましょう。
  • スーパーマーケットで子どもがお菓子を欲しがったら「今日はリンゴを買いに来たの」と言えば「今していること」に焦点を置くことができます。子どもは多くの場合、ショッピングカートに入っている興味のある物を触って、名前を知りたがります。そんな時に大人は名前を紹介することができます。「リンゴを持ちたい?」、「赤いリンゴだね」、「リンゴのにおいする?」、「リンゴを4つ買おうね」、「リンゴをカートに入れるの手伝ってくれる?」など、子どもが「今していること」を言葉にして伝えると、子どもは単語や句・文を吸収し、今何が起こっているかということを理解し、先ほどの「お菓子を買いたい」という欲求から「リンゴ」へと気持ちを方向転換ができます。

過激な刺激は避けましょう

  • 子どもが自分をコントロールするのが難しい時が必ずあります。特にお腹が空いている時、疲れている時、刺激が強すぎる時などがそうです。レストランやショッピング街などは、幼い子どもにとって刺激が強すぎます。大人は強い光や音を意識的に遮断できますが、幼い子どものそのような機能はまだ発達途上です。
  • カフェインは幼い子どもには与えません。また砂糖の摂りすぎに気をつけましょう。テレビ、コンピュータ、携帯電話の使用は避けましょう。

待ってあげましょう

  • 制限の内容は、子どもが成長し、もっと責任を負えるようになるにつれ変わってきます。1歳の子どもに適切な制限であっても、3歳の子どもにはそうでないこともあるので、大人は子どもと共に成長し、制限を調整していかなければなりません。子どもと一緒に調整することによって、自分は親から信頼されていると感じことが大切です。そうすることで、子どもが成長したときに、今度は自分で自分の制限を決められるようになり、それが自信につながります。